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幕が降りてからも消えることのない光

韓国国立劇場『胎』
鑑賞日:7月11日(土) 14:00~
女性

圧倒された。惹き込まれた。
よその国の遠い昔の歴史を知るなどという感覚は
開演前、蹲ったまま微動だにせぬ亡霊達を目の当たりにした瞬間消え失せ
忽ちわたし自身の物語となっていた。それほどに夢中になった。


胸を抉られるような展開が連綿と続く。
六臣が被り、また舞台にも無数に浮かぶ笠は
ひとの謀や欺きによって失われた魂を意味するのだろう。
事切れたあと脱ぎ捨てた上衣はどうにもならぬ現世に対する
『恨(ハン)の心』だったかもしれない。
そして赤子が生まれるときに纏い、王の精神を蝕んでいく赤い布は
すべての人間に課せられた業を表しているのではないだろうか。

その一方で、遺された人が見せる命のなんと強かなこと。
哀れな下男の妻は両手の自由を奪われ、それでも我が子を守るべく獣の如く口に咥えての逃亡を試み、
後に心身を壊してもなお、乳を飲ませようと亡き子の姿を求めて彷徨う。
大義名分の為に次々と命を奪いゆく者達の中にあって
ただ守ること。ひたすらに与えること。名もない無力な母は他に何も知らないのだ。
彼女の表現する母性に、言語を超越した生命の根源的な力を感じた。

ラストシーン。遺されたもうひとつの命がこの闇の物語を仄かに照らす。
その命を包み込むように、寄り添うように輝く、幼かった上皇の位牌。
光は幕が降りてからもカーテンコールの後もずっと消えることはなかった。
それはわたしたちにとって救いであり、作者オ・テソク氏にとっての痛切な願いなのだ。

貴会場での観劇は初めての経験でしたが
スタッフの皆様の心尽くしの応対にとても感銘を受けました。
また機会がありましたら是非利用させて頂きます。
そして、素敵なお芝居と結び付けて下さいましたこと、大変感謝しております。
おかげさまで心に残る大切な一日となりました。

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2009年07月31日 21:30に投稿されたエントリーのページです。

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