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グローバルな課題を扱った身近な舞台

ソチエタス・ラファエロ・サンツィオ 『神曲 煉獄篇』
鑑賞日:12月21日(月・祝) 19:00~
男性

 この劇を観て、現代の世界、人々の日常生活を「天国と地獄の間」に譬える演出家の意図を感じました。

 一人夕食の支度をする母親。Honeyと呼ばれ現れた息子は、頭痛がして食欲がないことを訴える。息子が何気なく言う、“Is he coming home ?”からheとは誰なのかとまず疑問に思いました。「父親」だとすれば息子との距離を感じます。この場面から、先日読んだ、親の仕事の関係で、家族が一緒に食事をしない「孤食」は、子どもの会話能力、情緒の発達に弊害をもたらすという新聞記事を思い出しました。自分の部屋に閉じこもり一人でテレビを観たり、ロボットを友だちとする息子の姿は、まさにこの親子のバランスの欠如から生じているものと感じ取りました。

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撮影=佐藤日登美

 出張から戻った夫への妻の対応にも、日常の生活における夫婦間の会話の欠如を連想させる言葉が見られました。妻が運んだ食事には殆ど手を付けることもなく、“Where is my hat ?”と言って帽子を捜させ、“Call him here.”と息子を呼びつける夫。息子とのダンスを求める夫に「今日はやめて」と縋る妻。そして、疲れを忘れたかのように息子を連れて2階に上がる夫。紗幕には「今」の一文字。

 この後の長い、父親と息子とのやりとり(暴力・会話)。この中で、Daddyという息子の言葉も聞こえてくる。そして疲れ切った姿で、乱れた服を直し、ピアノに向い赦しを乞う父親。紗幕には、「音楽」という二文字。

 この劇には、地球を思わせる球体と純潔の象徴とも言える月を思わせる輪が多く登場する。この球体と輪が、混沌とした現代の世界を象徴するかのように演出に効果を与えている(特に、黒色)。

 鑑賞前は、ダンテの『神曲』三部作ということでかなり難解な内容を予想したが、グローバルな課題を扱った身近な舞台に感じた。

 世田谷パブリックシアターでの鑑賞は初めてであったが、この劇に相応しい劇場でとても見やすかった。日本とイタリア両国の劇関係者がセット、効果、照明等で連携し、見事に一つの素晴らしい舞台を作りあげた。
  

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2009年12月21日 21:27に投稿されたエントリーのページです。

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