« 『夜中に犬に起こった奇妙な事件』当日券情報 | メイン | 『ハルナガ二』上演時間&当日券情報 »

『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』制作発表会レポート

このエントリーをはてなブックマークに追加

[日時] 2014年3月25日(火)13時~14時
[会場] 世田谷パブリックシアター ワークショップルームB 
(三軒茶屋キャロットタワー4階)

[登壇者] 森新太郎(演出)  小田島恒志(翻訳))
内野聖陽/浦井健治/明星真由美 町田マリー 黒田大輔 小林勝也/成河 
-------------------------------------------------------------------------
3月25日(火)、世田谷パブリックシアターが初夏に贈る主催公演『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』の制作発表会を行いました。
当日は、演出を務める森新太郎さん、翻訳の小田島恒志さん、そして、出演の内野聖陽さん、浦井健治さん、明星真由美さん、町田マリーさん、黒田大輔さん、小林勝也さん、成河さんと大集合!
作品に対する熱い想いや率直なご感想を、笑いもたっぷりに語ってくださいました。

blogzenin_1.jpg

(写真前方左から、浦井健治、内野聖陽、成河、
後方左から、森新太郎、黒田大輔、明星真由美、町田マリー、小林勝也、小田島恒志)
撮影:小林由恵(すべて)

◆本公演について
『ビッグ・フェラー』は、Work Play(労働の演劇)の書き手としてイギリス内外で人気の劇作家リチャード・ビーンの作品です。戯曲を発表するごとに評価を得る同時代作家ビーンの、まさに旬な作品を、読売演劇大賞「大賞」ならびに「最優秀演出家賞」、続き、芸術選奨文部科学大臣新人賞と、次々と大きな賞を"かっさらって"いっている森新太郎さんが演出をしてくださるということで、まさに、旬な作品と旬な演出家の出会いが叶った状態でスタートいたします。
本作は、1972年から2001年までの30年間を描いた物語。資金や物資を調達するIRA(アイルランド共和軍)の後方支援部隊ともいうべきNY支部のメンバーが物語の主軸となっていきます。舞台となるのは、戦闘地域ではなく、彼らが隠れ家とするアパートメント。背景に広がる激動の現代史を肌身で感じながら、登場人物の7名が30年にわたり、いかに生き、そして、いかに去って行ったか、ということがスピーディにパワフルに、時に喜劇的なタッチも合わせながら展開されていきます。
IRAと言うと、日本で暮らす私たちにとっては遠い国の話と感じがちですが、暴力の連鎖や民族紛争の波は、国際社会を生きる私たちにとっては対岸の火事ではないのではないかという思いと、心強いキャストと力強いスタッフの皆さんにお集まりいただけたことで、このハードルの高い作品を上演する機会を得ました。それでは、演出・翻訳・出演の皆様にひとことずつ頂戴したいと思います。

blogkaikentyu2_4116.jpg
blogmori3_EAF6694.jpg
◆森新太郎(演出)
いま、「賞をかっさらった......」とご紹介いただきましたが、賞を頂いたからといって演出がうまくなっているわけではありませんでした(笑)。「あぁ、芝居づくりは一筋縄ではいかないなぁ」と、いつもと同じ厳しい気持ちで本作にも取り組もうと思っています。
今回、IRAが題材ということで、取り組む我々にとって、近いか遠いかといえば遠い物語。ここにいる出演者は内野さんをはじめ、勉強熱心な方ばかりですので、まだ、本稽古の前ですが、かつてないほどに勉強会を開いています。明日も勉強会です。そのくらい、この台本に書かれている世界情勢だったり、この人たちが直面しているアイルランドが北と南に分断している状況だったり、なにせ舞台がNYということで、日本とはそこもまた違う。
実は、現代史をごっそりと勉強して、理解しないとこの芝居ができないということがわかってきまして(笑)。もちろん、ビーンは一流のストーリーテラーで、そういうことでもドラマチックにどんどん楽しませられる作家なのですが、個人の力ではいかんともしがたい巨大な歴史のうねりがきちんと描かれている作品ですので、演出家としては、皆さんに、そこをきちんと提供できたらと思います。楽しむだけでなく考えさせられる作品になると思います。
我々が、いかにボーダー・国境がたくさん引かれた世の中で生きているか、ということを実感させられています。東西で分断されている世界もある、イスラム世界とのボーダーもある、もっとミクロな部分で言うと、この人たちが常に言っているのが、同性愛者に対するボーダー、障害を持っている人たちに対するボーダー、男性が社会進出を果たしてくる女性に対して感じているボーダーだったり。意図せず、そういうことに巻き込まれている。
内野さん演じる主役のコステロも、ある事件により、一体、自分を社会的に意味づけているボーダーとは何なんだろうと葛藤をはじめます。我々にも全然無関係ではない話です。
blog4_EAF6698.jpg
今回のキャストは、"ドリームチーム"です。今まで客席で、一緒にお仕事したいなぁと思っていた人たちがこれだけ揃ってしまい、演出家としては嬉しい半面、ちょっと恐ろしくもなっています。失敗したら自分のせいじゃないかと(笑)。皆様のご期待に沿える作品になることは間違いないと、いまこの場で断言したいと思います。どうぞご期待ください。

blog5_6720.jpg
◆小田島恒志(翻訳)
歴史のうねりの中にある"個人"、あるいは"個人と個人のつながり"。これがですね、あまり強調するのもどうかと思いますが、登場人物がみんな"バカ"なんですよ。本当にバカです(笑)。が、シリアスな歴史を背景に書かれている物語でありながら、「何をやっているんだ、こいつらは?」と思って見ていると、突然、グサっときたりする。そんな物語を、イメージ通りの俳優陣でつくってくれるんだなと。全員が役にぴったりの"ドリームキャスト"です。既に観客の気分で、楽しみで仕方ないです。
IRAというとテロリストのことですが、そのこと自体を肯定するとか、否定するとか、そういう話ではありません。描かれているのは人間ひとりひとり。(リチャード・ビーンは)身近にあるテロリズムを背景に、こういう物語が書けてしまうんだなという意味で、すごい台本であるということを強調しておきます。
blog6_6768.jpg
◆内野聖陽(デイヴィッド・コステロ a.k.a. ビッグ・フェラー)
【本作のタイトル・ロール。IRAニューヨーク支部のカリスマ的リーダー】
この作品をいただいた時には、"IRA"という言葉を知っていたくらいで、詳しいことはさっぱりわからなかった。いったいIRAとは? そういうテロリストたちが何をしているのか? そういう知識がない状態で「本当に私がこれをやるんですか?」と。ですが、皆さん、コステロ役は私にぴったりだ、と言ってくださるんです。それで、台本を読んでみると、ものすごい男なんですね。テロ組織のNY支部のリーダーですから非常なるカリスマ性を持っている。「これは自分には太刀打ちできないんじゃないか」という気もしたりして。でも、読み進めると、"男と戦い"、"男と組織"、"男と時代"というようなことを、たくさん考えさせられる骨太な話。世界史の中でも、激動の現代史を背景にしているのでとても壮大な物語です。役者として非常なハードルをたくさん課されている状態ですが、面白くなると確信しています。いかにシンプルに、そして普遍的に、IRAを知らない方たちにも、どれだけワクワクドキドキさせられるものを創れるか、これが、今、僕にとって最大の飛び越えるべきハードルです。すごい役をいただいているので、現在黙々と勉強中です。
blog7_6743.jpg
blog8_6789.jpg
◆浦井健治(マイケル・ドイル役)
【自ら志願しIRAに加入する、純真無垢で寡黙な男。表の顔はNYの消防士】
日本ではなかなか想像しにくいIRAなどといった、そういうテロ組織の物語ではありますが、普遍的なもの、人間の欲だとか、思いだとか、信念だとか、そういったものを考えさせられる作品です。この物語はNYのマイケルのアパートで起こる"日常"の話。マイケルは、ごく普通の男。普通であるがゆえに、テロ組織には一番利用しやすい人間だと、コステロに見抜かれ、テロ組織に加入していきます。コステロはマイケルをチェスの駒の中で実は一番強いポーン(将棋の「歩」)だと例えるんです。人間は人から影響を受けた時、信念が変わった時、どのように変化していくのかということを、その後に起こった悲惨な出来事も含めて、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。が、僕もまだ把握しきれていないので、勉強会をがんばりたいと思います(笑)。
blog9_6802.jpg
◆明星真由美(エリザベス・ライアン役)
【本国アイルランドのIRA。女性ながら幹部候補生として、男を圧する程のキレ者と評判が高い】
昨晩、役柄についてこの場でどのようにお話をしようかと考えている最中、夫婦喧嘩が勃発いたしまして(笑)。一晩中ガミガミ言われて、その相手を見ながらずっと考えていたことが、人は自分が正しいと思うと争いになるんだということ。それがどんなに善であろうと、共有できない相手とは戦争になってしまう、これは人類最大の矛盾なのではないかと考えました。自分が思う"正しいこと"ってなんだろう? "正しいを共有する"にはどうしたらいいんだろう? 今まで正しいと信じていたことを失った時に、人間はどう生きていけば良いのだろうという、人間に大事な問題を取り上げた作品です。自由な立場にある我々演劇人が扱うということは責任重大であり、だからこそ、すごく意味のある作業になるのではないかと思っています。
blog10_6816.jpg
◆町田マリー(カレルマ役)
【プエルトリコ系の謎の女性。実はその正体は・・・・・・?】
本作を上演することによって、日本の方に、今もまだ北アイルランドがイギリスから独立するために武力を使って戦ってしまっている現状があったり、その歴史がずっと続いてきたという事実を知っていただくことに、すごく意味があるのではないかと思います。同時に、この作品は、ストーリーには引き込まれるような面白さがあり、登場人物も魅力的に描かれております。テロ組織という極限の状態で見えてくる人間の内面、悲しみなどは、お客様にとっても興味深く感じてもらえると思います。
私の役は、共演の皆さんとは違ってIRAの人間ではないですし、しかもプエルトリコ人という皆さんと異なる人種を演じることは、結構難しいことなのではないかなと。お稽古を通して、その演じ方についても工夫をしていきたいなと思っています。
blog11_6858.jpg
◆黒田大輔(トム・ビリー・コイル役)
【ちょっと短気で、ちょっと不気味な怖さを持ちあわせるIRA兵士。表向きの顔はNYの警察官】
調べれば調べるほどに、この戯曲がわからなくなってくるという・・・・・・。勉強して、もう一回読んでみると、更によくわからなくなっていくので、ならば、勉強しない方がいいのではと(笑)。共演の明星さんに、「何回も読めば、いろいろな解釈ができる普遍的な台本なのかもね」と言っていただいて、「ああ、これだ」と思いました(笑)。森さんもおっしゃっていたボーダーですが、普段、生活をしている時は、マルとバツに分けるボーダーを引かないと生きづらいようなところがありますが、よく考えてみれば、そんなボーダーなんてない、自分だっていつ越えているか分からないぞ、という怖さやゾワゾワするような感覚がある。最高のエンターテインメントになるように、そして観ていただいた方々にボディブローのように、何かを持って帰っていただければいいなと思います。
blog12_6868.jpg
◆小林勝也(フランク・マカードル役)
【"FBIに通じている者が?"と本国から裏切り者を捜しにやってくる。根っからの武闘派】
(台本の)一幕の1972年、私がちょうど30歳の頃にあさま山荘事件が起きて、(事件の)中継を見ながら稽古場にいました。また映画少年でして、アイルランドが関係するイギリス映画や演劇もたくさん観ていましたので、僕にとっては、この物語は比較的身近な話でした。あと偶然ですが、昨年ロンドン公演に参加したついでに、アイルランドのダブリンから列車で2時間のベルファストに行ってきました。今や観光地となった壁の前を歩いたりして。でもその時は観光客は誰もいなくて、ひとり「俺だけが観に来たんだ」と感慨深く思ったりしていました。そして帰国したら、ちょうどこの話をいただいて。(この作品の背景にある)自分が見てきた社会現象のようなものが、演劇活動やその関係を通じて割と身近にあったものですから、自分の中で縁のある芝居だと思って演じたいと思います。
blog13_6902.jpg
◆成河(ルエリ・オドリスコル役)
【アイルランドの刑務所から脱獄しNYへ渡ってきたIRA兵士。お調子者だが、絶えず夢を追う。】
『どれだけ難しい芝居をやるんだ』と思われるかもしれませんが(笑)、僕は初めて台本を読んだ時、シチュエーションコメディ的に描かれているところもあり、とても面白いと思いました。ドライでポップな会話というものと、組織ならではの腹の探り合いのような会話が同時に流れている。あとは、その背景など詳しいことを背負って演じる人間たちが腑に落ちた状態で(二種類の会話を)二重奏することができれば、前知識なくご覧になる方にも楽しんでいただけると思います。僕が演じるルエリは、シリアスになりがちな物語の中で、ドジでゆるいキャラですので、お客さんにとっての窓口となれたらと思うのと、その一方で、あれこれ画策しながらも飄々とした部分があったりと。この作品の登場人物は皆、人間味あふれる多層的な人物として描かれているので、皆さんの窓口を開いて演じていけたらと思っています。
blog14_4059.jpg
◆ポスターについて
今回は、ポスターが2種類ございます。
ひとつは、キャストの皆さんに緑・オレンジ・白というアイルランドの国旗色のTシャツを着用していただいたデザインです。緑が昔からの伝統を受け継ぐカトリック、オレンジがプロテスタント、北アイルランドの問題はまさにそこにぶつかりあいが生じたことによりますが、白が、これら両者の間を結び付ける平和・協調を象徴しています。
もうひとつは、1972年の"血の日曜日事件(ブラッディー・サンデー)"が起きた場所の壁に、実際に書かれている画をモチーフにしています。撮影当日、内野聖陽さんには大きめの石を持っていただき、ひたすら背中だけを撮らせていただいたポスターということでございます。

チラシも同様のデザインです。ぜひ、皆様、お手にとってご覧ください
blog15_4167.jpg

『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』公演情報

About

2014年4月 3日 16:14に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「『夜中に犬に起こった奇妙な事件』当日券情報」です。

次の投稿は「『ハルナガ二』上演時間&当日券情報」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.